かすみ日記

キャッシュカードを盗まれたら・・・

投稿日:2005/10/10/ | カテゴリー:日記

弁護士 河野浩  
 
 さる8月3日、偽造、盗難キャッシュカードによる預金不正引き出しによる被害について金融機関に補償を義務づける預金者保護法(正式には「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払い戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」というやたら長ったらしい名前の法律です)が成立しました。来年2月に施行されます。
 
 これまで金融機関は、民法478条及び取引約款を盾に補償に応じてきませんでした。また裁判を起こしても殆どの場合、預金者側の敗訴という結果に終わっていただけに預金者にとっては朗報であろうと思われます。
 
 法律の骨子は次のとおりです。
1. 偽造、盗難被害は原則全額補償
2. 預金者に軽過失ある場合75%補償(偽造の場合は全額)
3. 預金者に重過失ある場合補償なし
4. 預金者の過失は、金融機関側に立証責任
5. 補償されるのはATMによる払い戻し
 
 
 問題となるのが、過失の有無、過失の程度です。最終的には個々の事例ごとに裁判所が判断することになりますが、全国銀行協会では軽過失、重過失にあたる場合を列記した自主ルールを公表する予定です(この原稿が掲載されるころまでには公表の予定です)。また、この法律の付帯決議や国会審議の過程で、具体的な事例ごとの過失の有無がある程度明確にされています。

 
 
 では、次のような場合、いくら補償してもらえるでしょうか?答えは原稿の末尾です(ただし、答えは国会審議や付帯決議を基にしたものですので、必ずそれだけの補償がなされるとは限りません)。
1) 暗証番号を書き込んでいたカードを盗まれた
2) 暗証番号を教えていた他人が勝手にカードを持ち出した
3) 生年月日などの類推しやすい暗証番号にしていたカードを盗まれた
4) 3と同じケースで、金融機関から番号変更を促されていた場合
5) 3と同じケースで、免許証や保険証等と一緒に盗まれた場合
6) 類推されにくい暗証番号を使用していたが、長期間使用しており金融機関から番号変更を促されていた場合

 
 
 いかがでしょうか。そもそも過失と言えるのか、過失と言えるとしてもそれが軽過失なのか、重過失なのか、その判断はなかなか難しいものがあります。国会審議や付帯決議で示された無過失、軽過失、重過失の具体例が合理的かどうか、はっきり言って私にもよく分かりません。また、盗難の類型は上記ケースに尽きるものではありませんので、過失の有無、過失の程度を巡って金融機関と預金者との間で折り合いがつかず裁判までもつれるというケースは、この法律が施行されてもなくならないでしょう。

 
 
 結局は、この法律が施行されても、これまで同様、類推されにくい暗証番号を使用し、暗証番号の管理に注意する、1日の払戻限度額を引き下げる等の自己防衛が不可欠なようです。
 
 
 また、この法律では、窓口における払い戻しやインターネットバンキングによる取引は保護の対象となりませんので注意が必要です。私も某銀行のインターネットバンキングを利用していますが、最近は、金融機関側のセキュリティー強化の姿勢をひしひしと感じます。

 
 
 従来、某銀行ではログイン時にお客様番号及びログインパスワードを入力し、振込等実行時に更に6桁の第二暗証番号を入力していたのですが、フィッシング詐欺等による不正アクセスが横行し始めてから、第二暗証番号の入力方法が変わりました。単に第二暗証番号を入力するのではなく、6桁の第二暗証番号のうち、左から○桁目、○桁目、○桁目、○桁目という4つの数字を入力する方式に変わったのです。しかも何桁目を入力するかは取引の都度変更されるため、単に前回入力した4つの数字を不正入手したとしても、不正実行が困難なシステムとなっており、なるほどなあと感心してしまいました。
 
 ただしこういったセキュリティー技術は、悪知恵の働く輩(その努力を正業に振り向ければそれなりに成果を生むと思うのですが・・)により必ず破られる運命にありますので、金融機関側のみならず、我々も、命の次に大切?な財産は自分で守るといった姿勢がますます求められる世の中になってきたようです。
 
 (答え)
1)補償なし、 2)補償なし、 3)全額補償、 4)75%補償、 
5)75%補償、 6)全額補償