かすみ日記

独占禁止法の改正について

投稿日:2005/10/26/ | カテゴリー:日記

弁護士 根岸清一 
 
 
 本年4月20日に独占禁止法が大きく改正されたことはご存知でしょうか。この改正独禁法は、来年2006年1月4日から施行されることになっていますので、改正点についてお伝え致します。
近時の規制緩和、事前規制社会から事後規制社会への転換を象徴する改正ともいえるものですので、記憶に止めておいて損はないと思います。
改正の第1は、課徴金算定率の大幅引上げです。課徴金とはカルテル等の行為によって事業者が得た不当な利得を国に納めさせて違反行為の抑止を図ろうとするものです。課徴金の算定率は業種と企業規模によって違いますが、例えば製造業の大企業に対しては、売上額の10%になります。従来は6%でした。売上額の10%というのは、大変な高率であり、課徴金は企業の必要経費としても認められませんから、企業にとっては大変な負担になります。

 
 しかも課徴金納付命令の対象になる行為が拡大されました。従来は価格に影響のあるカルテル行為が対象とされていましたが、購入量や取引相手方を制限することで実質的に価格に影響を与える場合や私的独占についても対象とされることになりました。
更に、早期にカルテルから離脱した企業には算定率が減じられたり、度々カルテル行為を繰り返す企業に対しては、算定率が更に5割増しされることになりました。何れも、カルテル行為を止めさせるインセンティブを与えて、カルテル行為自体を撲滅しようという意図に基づく立法です。


 第2に、課徴金減免制度の創設です。今回の改正の目玉と言われています。カルテル行為に関わった企業が自らカルテル行為を申告することによって、未然にカルテルを防止させようとするものです。調査開始前にイの1番に申し出た者は課徴金が全額免除されます。刑事処分も事実上課されない扱いになりました。そして第2番目の申告者は50%の減額、第3番目の申告者は30%の減額です。しかし、第2番目以下の者に対する刑事処分の減免は約束されていません。カルテル行為の情報を得た企業の担当者も経営陣も大変悩むことになります。欧米では、カルテル防止に絶大な効果を上げている制度であると言われており、今回我が国にも導入されることになりました。

 
 第3に、従来独禁法違反行為があると、まず勧告がなされ、これに応諾するか否か、企業は考えることができたのですが、この勧告制度が廃止され、いきなり排除措置命令が発せられることになりました。これに不服がある者は一定期間内に異議を述べることによって、審判手続が開始されるということになりました。また審判確定を待つことなく、排除措置命令と同時に課徴金納付命令が出されることになりました。スピードアップです。これに対応する企業の側も、独禁法に対するガードを従来に増して図らなければならなくなりました。

 
 第4に、従来の公正取引委員会の調査権限は、任意調査を中心としたものでしたが、刑事告発を目的とした、犯則調査権限が導入されました。国税の犯則調査に類似したもので、強制調査の色合いの濃いものです。

 
 このように、今回の法改正は、何れも独禁法の強力化の色彩が色濃く出ています。

 
 なお、宣伝になりますが、青林書院から青林法律相談シリーズの1冊である『独占禁止法の法律相談』の新版が出ました。5,565円と少々高めの価格設定ですが、弁護士会の仲間と書いたもので、多分現在最もアップツーデートの著作ですので、ご参照下さい。