かすみ日記

おふくろの味

投稿日:2006/12/24/ | カテゴリー:日記

弁護士 齋藤 則之 
 
新しい年はお雑煮から始まる。日本人ならその割合は9割5分以上と思うが、どうだろう。
お餅もそうだが、味は味噌、醤油をベースにそれこそ家々皆違う。長じても味覚中枢深く沁み込んだ家庭の味は一発一口で当てることが出来る。恐るべき識別力である。われわれはこれをおふくろの味と言う。生家を出でて40有余年、お酢を使った母の料理は私のFAVORITEだった。が、それ以外は醤油味で炊く程度の品々でしかなかった。懐かしいがさして美味しいとは思わない。腹をすかした昭和2,30年代だから不味いとは思わなかっただけである(オカンご免ね 本当のことを言って。オトンも乏しきを憂えず頑張ったね)。外食をする余裕のなかった時代である。子供は家庭の味しか知らなかった。口に合うのではなく、合わされたと言った方が正確である。
それが変わった。私のことである。

 
30歳代のはじめ、濃い味の料理を肴にかなり飲んでいたのが原因か、若くして血圧が高くなり、生命保険契約の加入を拒否される寸前までになった。さあどうするか。いい加減な意志力、誘われると断れない人付き合いの良さなども念頭に研究に研究を重ねた結果、ひとつの結論に達した。塩分を極端にまで減らし、例えば、味噌汁は旨み出し濃くし味噌の量を減らし一日一杯とし、漬物さんとは涙の別離、塩分を誤魔化す砂糖類は料理から完全に追放して、甘みを必要する場合はお酒でまかない、味醂を限界ラインとする食生活改造の革命的プランを樹立してこれを愚妻に実施させることにし、暴飲暴食は断固継続するの大英断を下した。爾来、30年、お陰様で、血圧は限界線上のマリア様に抱かれ、安らかな寝息をたてている次第。かくして我が家における家庭の味が生まれたようである。
料亭のお昼を食した豚女。あろうことか板前を前にして「お母さん これうちの味ね」と口走る。愚妻赤面して顔上げられず。こんなものかも知れませんね、おふくろの味って。
知らぬが仏、か。

 
夫婦の基本は食を共にすることである。
仕事柄、毎年、離婚事件を何件か受任する。一昨年、円満復縁できたケースに恵まれた。それ以外すべて収束は関係解消である。熱いものは時間の経過とともに冷却する。夫婦の関係も双方努力しないと物理法則と変わらない。寝間を別にして云十年、会話はあっても一日三言。家賃無料の同居人か。それでも立派な夫婦は珍しくない。食事を共にできるからである。二人を結びつけるか細い糸は意外に強い。個食の始まりは終わりの序曲と言うのが離婚案件を扱う弁護士の実感である。
夫婦円満、家庭の平和のため、平成19年は、家に帰って古女房を肴に大いに飲むか(「マキタ」のオヤジ、「みやび」のママちゃん 来年償いをするからね)。