法律相談ケーススタディ

家事・相続問題 遺言の功罪

不謹慎なことを承知でいえば、他人のことなら遺産争いも悪くない。
非難して攻撃の手を緩めない、取られるぐらいなら隠してしまえと隠匿防御。お通夜の席で全員が確認した宝石&貴金属が一夜にして箱ごと消えることもある。繰り返す作戦も多彩で、手が込んでいる。人って本当に研究熱心だなと感心する。

法律業務に縁がない人でもこれに類する話は幾らでも耳にするのが昨今。そこで、自分があの世に旅立っても財産をめぐって争う愚を避けようと遺言を思い立つ。配偶者がいればじっくり協議し、考えられる最適な遺言をしたため、あるいは公正証書を作成してもらう。『ハッピー&めでたし』でフィナーレを飾れる。

しかし、である。
遺す側、相続する側の財産環境に大きな変動があった場合、最適なはずの遺言は『配分割合不適切、依怙贔屓もいい加減にしてよ』の遺言に変質してしまう。「何も問題はないではないか、書き直せばよいではないか。」とただちに反論されそう。「鋭いですね。流石。」と賛辞を送りたいところだが、そうも行かない。
遺言してから2,30年経っているケースも少なくなく、往々にして遺言するご本人に認知症が表れていることも珍しくないから、応変の処置を採れない。成年後見人を就けてもらっても本人に代わって遺言を取消、変更することはできない。
ここに登場する人物がいる。
海なし県から白砂青松の地に居所を変更し(今風に言えば「拉致」)、本人と日常を共にし、人間関係、利害関係の見当識を失う時期を見計らい、本人を自在に操り、自分の有利な遺言をさせるのである。講釈師は見てきたような嘘を言うとか。
しかし、これは私が扱った事例(を少しぼかしました。)。こうした手口で、認知症、痴呆の進んだ老人の遺言を事実上変造するケースが後を絶たなくなった。
私は、標語的にこう言っています。『抱え込んだ方が勝ち』と。

対策はと問われるに、「ない。」と答えるしかないのが悔しい。
ただ全くないわけではない。『遺言は、法定相続では不都合を生じる場合に限ってし、その手当のみにとどめる』程度の対策はある。それ以上の遺言は却ってしない方がよかったと考えられるケースが圧倒的だったからです。

文責:齋藤則之

カテゴリー:家事・相続問題 更新日:2011/04/19/